2008年5月15日 (木)

「大相場狙い」通貨オプションの現在

外国為替市場では4月中旬以降、米景気や株価悲観論の修正が進むとともに円の強気派やドル弱気派の勢力が弱まった。ドルの対円相場はこのところ1ドル=102―105円台で底堅い。将来の為替変動を予測する通貨オプション市場でも円高・ドル安方向への波乱前提の取引は減少傾向にある。
 ドル・円の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)1カ月物は3月17日、直物が一時1ドル=95円70銭台と1995年8月以来の安値を付けたタイミングで20%台まで急上昇。2007年8月17日以来、7カ月ぶりの高水準になった。半面、14日時点では11%台だ。07年8月17日、08年3月17日のいずれも米金融システムや株式市場の動揺が激しかったころで、現在とはやや「隔世の感」がある。
 コントラリアン(流れに逆らって基調反転時の高収益をもくろむ投資家)が消えたわけではないものの、一発勝負を仕掛けるには機が熟していないと判断したようだ。
 例えばロング・ストラドル戦略。権利行使価格が同じで同一期間物の円・コール(買う権利)とプット(売る権利)を同額買い、設定水準とのかい離幅が広がれば広がるほど多額の利益を得られる。しかし、小幅な値動きにとどまるとオプションの購入費用の合計を限度として持ち出しになってしまう。ボラティリティー低下で競争相手が少ない分、コストが抑えられるとはいえ「勝率が上がらなければ意味はない」(邦銀のオプションディーラー)。
 また、ロング・ストラングルと呼ばれる行使価格が異なる同一期間の円・コールとプットを同額購入する手法もあるが、こちらは安上がりの割には損益分岐点が高め。直近のレンジをかなりダイナミックに外れるとの見通しが必要だ。ロング・ストラドルに比べると需要は強まりにくい。
 問題は一連の状況の持続性だ。ある外国銀行の顧客担当者は「最近はストラングルやストラドルの売りでオプション売却益の積み上げを狙うケースが増えた」と話す。相場が荒れたさいには損失拡大につながりかねないだけにリスク管理の面では危うい。多少の「揺り戻し」は想定すべきだろう。(今 晶)

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2008年5月13日 (火)

英金融政策、景気配慮にやや傾斜か

英米では現在も住宅問題や信用収縮への不安が景況感改善を阻んでいる。金融当局はエネルギー価格などの動向を注視しつつも緩和スタンスを維持せざるを得ない。中でも英国は昨年以降、米国に比べると政策対応に出遅れ感がある分、景気への配慮ムードが強めになりやすい。
 英中銀イングランド銀行(BOE)はあす14日、四半期ごとの物価報告(インフレリポート)を明らかにする。12日発表の4月の英卸売物価指数が高水準だったほか、きょう13日発表になる同月の英消費者物価指数(CPI)で前年同月比の伸び率の市場予想平均は2.6%程度と目標上限の3%にじわりと近付く見通しだが、それでもエコノミストの間では「中銀が利下げ継続の選択肢を捨てる可能性はゼロに等しい」(英国系証券)との声が目立つ。
 BOEは7―8日に開いた金融政策委員会(MPC)では政策金利を5.00%に据え置いた。ただ直前に発表された生産や景況感をあらわす経済指標が悪化していたことから僅差(きんさ)での決定となった公算がある。
 MPC内の「物価重視派」も現行の金利水準にこだわっているわけではない。センタンス委員は前週、一部英誌に寄稿した論文で「物価には上振れと下振れ双方のリスクが存在する」と指摘。景気減速が長期化すればCPI上昇率が目標値を大幅に下回る事態も想定されると述べた。信用市場などの混迷度合いに応じた緩和措置を実施することに異論はないと受け取れる。
 しかも外国為替市場では最近、ユーロへの楽観見通しが後退しているために以前に比べるとポンド売り一辺倒の空気は薄れた。ポンド安の圧力緩和で輸入インフレへの懸念が弱まるようなら緩和的な金融政策には追い風だ。現時点では6月に0.25%の追加利下げが決まるとの予測が多い。
 金利引き下げは教科書的には通貨の下落要因だが、経済の早期立ち直りが見込めるとなれば逆の反応もあり得る。投資家や企業の「期待感醸成」にどの程度成功するかでポンドの方向性が定まることになろう。(今 晶)

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2008年5月 8日 (木)

豪中銀、ひとまず「忍」の一手も

 豪州では引き締め的な金融政策が続いている。原油相場などの先高見通しが根強いままだけに物価への警戒スタンスは緩められない。一方でインフレは景気の不安定要因にもなる。世界経済の失速懸念がなおもくすぶる中、当局にとっては腕の見せ所といえる。
 豪準備銀行(RBA、中央銀行)は6日、政策金利を現行の7.25%に据え置くことを決めたと発表した。スティーブンス総裁は声明で「総需要の伸びが2007年よりも鈍化しつつあることを示す証拠が増えている」と指摘。インフレ率は時間の経過とともに低下するとの見解を表明した。3月までの利上げ効果があらわれたとの評価でもあり、市場では「RBAは当面は金利据え置きに傾く公算が大きい」(豪州系銀行)などと受け止めて豪ドルが売られる場面もあった。
 しかし、事はそう単純ではない。スティーブンス総裁が提示したシナリオは「需要がさほど緩まなかったり賃金や(小売)価格に(エネルギー高などの)悪影響が及ぶ事態になったりした場合には変える」。結局は商品市況などの行方次第というわけだ。
 一連の「両にらみ」戦略には豪ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の底堅さへの自信がうかがえる。代表的な資源産出国としてのプライドもあろう。隣国ニュージーランドの中央銀行(NZ準備銀行)が7日、半期に一度の金融安定に関する報告書で景気のリスク分析にかなり紙幅を割いたのとは対照的だ。
 そもそも豪準備銀が政策判断のさいに重視する指標で、連邦統計局まとめの消費者物価指数をベースに算出した基調インフレ率は1―3月期の速報値が前年同期比で4%台に達していた。目標上限の3%とは1%以上の開きがある。無視はできない。
 ある欧州系証券の豪州担当エコノミストは「RBAの狙いはあくまでもインフレ期待の抑制で、物価高傾向がすんなり収まると考えているわけではない」と読む。米経済の立ち直りといった外部環境の改善が見られるようなら利上げ再開の可能性が高いという。世界的に株価が安定していることもあり、金利選好資金の豪州志向は比較的広がりやすい状況だ。(GI 今 晶)

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2008年5月 1日 (木)

英中銀、施策継続も危うさ消えず

国際金融市場では米景気慎重論の緩和傾向が持続している。米政府・金融当局の施策効果に対する期待感が再燃したためで、他の経済圏への視線は相対的に厳しい。例えば英国は住宅問題や信用収縮の面で弱点が目立ち、中銀イングランド銀行(BOE)の政策対応にもかかわらず先行き懸念がくすぶる。
 BOEは4月21日、民間金融機関の資金調達コストの低下と「貸し渋り」解消を狙って新たな金融支援策を打ち出した。価値が低下気味だった住宅ローン担保証券(RMBS)を英国債と交換する仕組みで、期間は最長で3年間。総額500億ポンド(約10兆円)と規模も大きい。需要増となれば上限の額にはこだわらない考えだ。
 米連邦準備理事会(FRB)が3月に導入した米国債の貸し出し制度(TSLF、最長28日)に比べると長い目で見た資金繰りへの不安は後退しやすい。
 半面、担保RMBSの価格下落に伴う損失は差し入れた側が負う。銀行の貸借対照表(バランスシート)改善に直結するわけではない。住宅市場などの活力回復が進まなければ元の木阿弥(もくあみ)だ。景気への悪影響も避けられない。
 4月29日に発表になった3月の英住宅ローン承認件数は6万4000件と現行基準になった1999年1月以来で最低の水準まで減少。エコノミストの間では「英中銀の『時間稼ぎ』が成功するかは微妙」(英国系証券)との冷ややかな声がある。
 BOEのキング総裁は29日の議会証言で、インフレへの警戒姿勢を示すとともに「低成長になったからといって英経済の将来を悲観する必要はない」と強調。早期利下げの可能性には踏み込まなかった。ただ、市場参加者は額面通りには受け取っていない。金融政策委員会(MPC)のブランチフラワー委員が同日、スコットランドでの講演で「行動を起こさなければ手遅れになりかねない」との見解を示した直後のポンド売りでの反応などとは対照的だ。
 ブランチフラワー氏は4月開催のMPCで0.50%の大幅な金利引き下げを主張しており、29日の発言はいわば「持論」。目新しさはあまりない。それでも注目してしまうところに疑念の根深さがうかがえる。(GI 今 晶)

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2008年4月24日 (木)

カナダ緩和政策、「安全運転」へ

 カナダでは金融緩和の姿勢が弱まりつつある。お隣米国の景気の先行きは依然、不透明だが、3月中旬までのような過度の不安は後退。カナダの実体経済や信用市場に悪影響をもたらすとの懸念も以前ほどではない。
 カナダ銀行(BOC、中央銀行)は22日、政策金利を0.50%引き下げて3.00%にすることを決定したと発表。エコノミストの予想通りの結果になった。声明では2008―09年のカナダ成長率見通しを1月時点よりも下方修正したほか、米景気減速が一層進むようなら追加利下げの公算があるとの見解を示したが、前回3月に用いた「近い将来」との表現は盛り込まなかった。
 BOCの緩和策開始は07年12月。4月までの金利の引き下げ幅は1.50%と米国の3.00%には及ばないものの十分に大きい。この間に米政府と連邦準備理事会(FRB)の政策対応も拡大した。カナダのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に対する従来の施策効果を見定める余裕も生まれやすい。
 23日発表の2月のカナダ小売売上高はさえない数値だったが3、4月の利下げ実施前のものだ。
 また原油高に歯止めがかからないにもかかわらず、中国やユーロ圏景気などが何とか持ちこたえていることも産油国カナダには追い風だ。価格上昇の恩恵をそのまま受けられるからだ。市場では「BOCは『公式見解』よりも早い段階での成長軌道への復帰シナリオを描いているのではないか」(米国系銀行)とのうがった見方も出ている。
 一方、原油輸出の「お得意先」が今後も好調を保てる保証はない。欧米住宅市場の混乱や信用収縮も早期収束は困難。さらにカナダ固有の構造問題である「東西格差」も埋まってはいない。東部の製造業が西の産油地域の足を引っ張る構図だ。金融当局も当面は警戒態勢を解くことはなさそうだ。
 ある国内証券の顧客担当者は「昨年秋、08年2月と株式市場などで広がった『米経済の最悪期は過ぎた』とのムードがぬか喜びだったことを忘れるべきではない」と警告する。米国と関係の深いカナダも同様というわけだ。長期スタンスの投資家のカナダドル買いは「抜き足差し足」の状態が続く。〔GI 今 晶〕

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2008年4月22日 (火)

短期金利指標、疑念招く「申告制」

欧米の短期金融市場では前週半ば、金利指標のあり方を巡ってさざ波がたった。英国銀行協会(BBA)が毎営業日明らかにしているロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が最近、実態に比べて低過ぎたのではないかとの批判が高まる中、BBAは自ら調査に乗り出す方針を表明。虚偽提示と判定した場合の「追放措置」までちらつかせるとレートはあっさり跳ね上がった。
 LIBORは各銀行からの報告を基に算出される平均値。ドル3カ月物は21日時点で2.92000%と1週間前の14日の2.70875%よりも0.21125%高かった。とりわけ17―18日のわずか2日間で0.17%強も上昇、信用不安が再燃したかのような状況だ。米国での利下げ観測の後退といった環境変化を多少、割り引いても「BBA警告」のインパクトの大きさがうかがえる。
 銀行側にも言い分はある。BBAは参加各行が示した水準を個別に公表しており、格差が生じればはっきりとわかってしまう。それが金融機関同士の「疑心暗鬼」を増幅させれば信用収縮や金利面でのコスト悪化が進み、資金繰りに支障をきたすところが出てくるかもしれない――。かつて日本の金融システム懸念が広がったさい、邦銀向けの上乗せ金利(いわゆるジャパン・プレミアム)が「見せしめ」に近い状態だったことを記憶している市場関係者は多い。
 しかし、LIBORは金融派生商品(デリバティブ)取引や一部の企業向け貸出などで指標になっており、数値が不正確だった場合には影響が多方面に及ぶ。実体経済の混乱を助長しかねないだけに決して許されない。ある国内投資信託のファンドマネジャーは「欧米銀行は貸借対照表(バランスシート)の改善に正々堂々と取り組むべきだ」と憤っていた。
バランスシートの早期修復は見込みづらいため、2008年度の中間決算期末に当たる6月末にかけてはもう一波乱ありそうな気配だ。英米やユーロ圏金融当局も当分は気を緩められそうにない。ただ、信用市場の本来の機能を取り戻すためには避けては通れない道だろう。〔GI 今 晶〕

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2008年4月17日 (木)

「レンジ・トレーディング」の行方

外国為替市場ではこのところ円相場の方向感が定まらない。米実体経済と信用リスクへの懸念がくすぶる半面、米政府・金融当局の政策対応が進んでいる分、パニック的なマネー収縮も起こりづらいからだ。短期スタンスの投機筋などの中にはレンジ前提の売買に傾くところも増えている。
 通貨オプション市場では最近、1ドル=100―103円や100円20銭―102円80銭といった範囲を一度も外れなかった場合に利益を得られる「ダブル・ノータッチ型」オプションの需要観測がしばしば流れた。主役は1月後半などにも同様の取引を手掛けていたアジア系の大手銀行。事実なら100円や103円ちょうどに近付くと権利消滅を防ぐ目的の円売り、円買いが膨らむことになる。
 また、ドルが1ドル=100円、103円を一回でも下回ったり上回ったりすると収益機会を失う「ノックアウト型」の存在も意識される。これも直物市場ではダブル・ノータッチ型と同じ反応がある。
 ポイントは一連の「防波堤」がいつまでもつかだ。対応するオプションが期日を迎えれば防戦目的の円売りや円買いは不要になり、既に形成された持ち高にも解消圧力が高まる。円売り、円買いともに便乗組もそれなりの規模に達しているはずだ。仕掛け的な売り買いに動揺しやすい環境が生まれる。
 市場では「振れるとすれば円高・ドル安の方向」との声が根強い。金利面でのドルの魅力回復が当分見込めない以上、長期資金に後押しされた相場の安定はおぼつかないためだ。日本の経常黒字構造もすぐには変わりそうにない。
 仮に日本経済が今後、米景気失速のあおりを受けた場合でも「日本の金利引き下げの余地は小さく、対ドルでの円キャリー取引(円の借り入れベースでのリスク資産運用)が復活する可能性は低い」(外国銀行の通貨ストラテジスト)。そもそも信用収縮の影響で欧米金融機関の貸出姿勢は厳しい状況だ。一方、日本の個人などは不況警戒で財布の紐(ひも)を締めかねない。2003―05年の円高局面と似通った構図といえる。(GI 今 晶)

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2008年4月15日 (火)

米低金利政策、脱却への道険し

欧米の信用収縮は微妙な段階にさしかかっている。米政府・金融当局が過去数カ月の間、複数の施策を矢継ぎ早に繰り出した成果を評価するにはまだ材料が足りない。事態がより深刻化するリスクも引き続き意識される。米低金利政策の「着地点」は読みづらい情勢だ。
 「金融危機の緩和は可能だが発生自体を防ぐことは難しい」――。米連邦準備理事会(FRB)のコーン副議長は12日、日米欧の銀行監督機関などで構成する「金融安定化フォーラム」(FSF)の一員としてこう語った。FSFは11日、7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で危機防止策について報告。G7共同声明に影響を及ぼしたが、具体的な政策提案にはいたらなかった。ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は「英国などから国際通貨基金(IMF)と共同で早期警告システムを構築すべきとの意見が出たものの、フォーラムの趣旨にはそぐわないと判断した」と述べている。
 元財務官の榊原英資早大教授は一連の動きについて「具体策を見極められる段階になるまでは市場関係者が好感することはない」と指摘。アナウンスメント効果の薄さを懸念していた。また、民間金融機関や企業が規制強化などに伴う「痛み」をどの程度受け入れるかにも不透明感が漂う。
 しかも米国では前週、ゼネラル・エレクトリック(GE)の1―3月期決算がさえない結果だったことをきっかけに実体経済の先行き不安が再燃。信用市場での「疑心暗鬼」も再び強まりそうな気配だ。米当局が仮に混乱拡大を未然に防げたとしても、レバレッジド・ローンや資産担保証券(ABS)といった米銀や証券会社の収益源がいつ息を吹き返すかは現時点ではまったく予測がつかない。
 日本では日銀が2001年3月、量的緩和政策という「未踏の領域」に到達した後、06年3月の解除まで丸5年かかっている。解除後も政治サイドからの抵抗などにあって金利正常化への道は険しいまま。最近は外部環境の悪化を背景に利下げ再開の観測すら浮上している。金融の構造や文化に違いがあるとはいえ、米国が同じ轍(てつ)を踏まないと言い切れるだろうか。(GI 今 晶)

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2008年4月10日 (木)

IMF、サブプライム分析に甘さ

国際通貨基金(IMF)は8日発表した年次の世界の金融安定性報告で、米国のサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン市場の混迷に伴う3月時点での損失額が9450億ドル程度(約97兆円)に達した公算があるとの試算を明らかにした。2007年9月時点での予測数値は最大で2000億ドル。IMFはリスクを判断するうえで甘さがあったことを率直に認めている。
 リポートは11日開幕する7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議での議論の「たたき台」になる。予想の上振れは住宅価格の下落に歯止めがかからなかったうえ、評価対象を商業用の不動産担保の融資関連にまで拡大したため。損失見込み額は住宅ローン絡みだけで約5650億ドルにのぼるという。
 今回の算出額は1990年代の日本の金融システム危機時に匹敵するもので、一段の混乱に備えるべきとの見解が示された。また銀行・証券会社などの資本不足の解消や公的支援の必要性についての記述もある。
 IMFは2007年4月の段階では、他の大部分の民間金融機関や投資家と同様、サブプライム問題の影響は限られるとの立場だった。しかし、ここに至っては「さまざまな参加者が手掛けた借り入れベースの資産積み増し(レバレッジ)の規模やパニック的な持ち高整理の可能性を組織全体で見誤った」と結論付けざるを得なかった。
 市場では「試算は試算に過ぎない」、「07年後半以降のマネー収縮の異常さを考慮すれば誤差発生は当然」との意見も出ている。ただIMF統計の存在感は大きいだけに「認識が甘かった」では済まされない面もある。猛省を促す声は多い。
 最近は英国など昨年後半に政策対応を抑え気味だった国でも手数が増加している。信用収縮へのスタンスの変遷はIMF調査部門に似た構図だろう。こうしたムードがG7会議などの場で一層高まり、声明が市場の不安沈静化につながれば昨年のような激しい動揺は起こりづらい。資産担保証券(ABS)取引などで痛めつけられた関係者の「リハビリテーション」にもプラスに作用するはずだ。(GI 今 晶)

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2008年4月 1日 (火)

米政府「監督強化」に賛否両論

米財務省は3月31日、金融市場の安定確保を目的とした監督改革案を発表した。サブプライム(信用力の低い個人)向け住宅ローン関連の混乱への対応が十分ではなかったとの反省に基づく。米議会でも改革検討の必要性は強く認識しており、政府提案をベースに関連法規の成立を急ぐことになりそうだ。
 最大の焦点は中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)の権限をどこまで拡大するかだ。財務省案では証券会社やヘッジファンドといった多様な市場参加者に幅広く情報提供を求められるほか、企業や金融機関向けの規則設定で主導的役割を担い、他の監督当局と協力する権利も得る。「安全網」を複数設置することで政策が後手に回ることを防ぐ狙いがある。
 このほか、連邦、州政府当局との間の役割分担についても明確にする方針だ。ポールソン財務長官によると施策完了までには数年を要する見通し。
 米議会では民主党の有力議員などから対応の遅れを批判されながらも一定の評価を受けている。
 問題は規制強化の「副作用」。FRBの守備範囲は既に3月、証券会社中心のプライマリー・ディーラー(米政府公認ディーラー)対象の米国債貸し出し制度を導入したことで事実上広がっており、今回の事態そのものに違和感はない。ただ証券業界などには「規制のみならず業界再編にもお上の意向が反映されるようだと活動の『萎縮(いしゅく)』と収益力低下につながりかねない」といった懸念が残る。
 ある大手外銀のエコノミストは「個人的な意見」と前置きしたうえで「政治サイドの動きは事実上、仕組みが比較的複雑な高リスク証券などを市場から締め出すもので、大手銀、証券各社の稼ぎ頭を奪うことにもなる」と指摘。長い目で見ると米国勢の地盤沈下は避けられないと読む。現実となれば実体経済が不安定な局面もすぐには終わりそうにない。
 安定志向と成長とはトレードオフの関係にあるということだ。(GI 今 晶)

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